さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第八章 父親
 翌朝、あたしは千春に連絡をして、彼女たちの家に行くと告げた。千春も兄から聞いていたのだろう。いつでもいいとあたしに告げる。

 あたしが玄関のチャイムを鳴らすと、外に出てきたのは尚志さんだった。

「さっき千春が出かけたけど会わなかった?」

「すれ違いになったのかな。探してきますね」

「いいよ。そのうち帰ってくるだろう? 上がる?」

 あたしは頷いた。

 あたしが通されたのはリビングだった。

 相変わらずものすごい量のビデオテープが並んでいた。

「これ、すごいだろう? 父親が母親の大ファンだったからね」

 あたしは彼女たちの伯父の話を思い出した。

 彼女は嫌になって逃げ出したと言っていたのだ。

 華やかに見える世界だけど、いろいろ大変なこともあるのだろう。

 それはどんな仕事でもそうだと思う。
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