さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「最近、元気ないね」

 あたしがぼーっとしているとそんな声をかけられた。

 あたしの傍に立っていたのは杉田さんだった。

「杉田さんも変わってしまうのかな」

 彼は不思議そうにあたしを見た。

「何か言われた?」

「そうじゃなくて、人気が出たら変わってしまうのかなって思ったの」

「多分、変わらないと思うよ。そう信じていたらきっと大丈夫だから」

 杉田さんはあたしの頭を撫でた。

 あたしはその仕草に妙な安堵感を覚えていた。

 あたしの心をそっと包み込んでくれる。

 彼はいつもそうだった。

 千春もずっと変わらないままだった。その前から友達だった弘もそうだった。

「そうだね」

 あたしは変わりたくなかった。いいほうに変わるならいい。でも、悪いほうに変わるのは嫌だったのだ。

 彼女は彼女だ。

 だから、あたしはあたしとして頑張ろうと決めた。

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