天空のエトランゼ〜赤の王編〜
ムーンエナジーとオウパーツの振動が、ダイヤモンドソードに絡み付く。

(長くはもたない!)

ダイヤモンドソードでは、ムーンエナジーでコーティングしたとしても、数秒で塵になる。

そう判断した九鬼は一気に、ダイヤモンドソードを振り下ろした。

「ば、馬鹿な…」

襲いかかろうと両手を広げた格好で、女の動きが止まる。

「…」

高坂は無言で、頷いた。

「あ、あ、あ、あ…あり得ない…」

頭上から、額の銃弾を切り裂き、女の体の中心に線が走った。

そして、次の瞬間…オウパーツは真っ二つになり、花が開くように左右に倒れた。

地面につくと、四つの各パーツに戻った。

体を包んでいたオウパーツがとれると、変幻していたエルの肉体が元に戻った。

「九鬼さん…」

額から血を流しながら倒れるエルを、九鬼は受け止めた。

「終わったか…」

銃口を構えたまま立ち尽くすジェースの許に、ティフィンが飛んできた。

「ああ…」

ジェースは構えを解くと、サイレンスを上着の中に突っ込んだ。

そして、倒れている玲奈を抱き上げると、そのまま…ゆっくりと歩き出した。

ダイヤモンドソードを地面に突き刺し、変身を解いた九鬼のそばをも無言で通り過ぎていく。

足下に転がるオウパーツに、見向きもしないで。

そんなジェースが通り過ぎるまで、目で見送った高坂は、転がるオウパーツのそばまで歩き出した。

「輝!あたし達もいくわよ!」

一連の攻防を唖然としてただ見ていた緑と輝ははっとすると、駆け出した。

「おお〜」

ジェースとすれ違う時、輝は腕のオウパーツを見つめながら、少し距離を取った。

「早くしろ!」

緑の声に、輝は慌てて走り出した。

「ひかるか…」

ジェースはフッと笑った。

「ジェース…」

ティフィンは、ジェースの隣を飛びながら、それ以上かける言葉がなかった。



「オウパーツを回収する!そして、然るべき場所で封印する」

オウパーツを素手で触ろうとする高坂に、駆け寄ってきた緑が慌てて叫んだ。

「部長!」

その声にも、手を止めることなく、高坂は笑った。
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