天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「心配するな。こんな鎧如きに、操られることはない」

高坂は敢えて、仮面のオウパーツから先に手を伸ばした。






「終わりましたね」

新聞部の部室で、舞から戦いの結果を知らされたさやか。そのそばで、通信を聞いていた梨々香が、笑顔で言った。

「そう…」

さやかはため息をつくと、ソファーに深々ともたれ、

「何も終わっていないわ」

天井を見上げた。



それから、数日が過ぎた。

各オウパーツは、大月学園とその他学園関係の土地に封印された。

仮面のオウパーツは、情報倶楽部の地下に再び封印された。

「今回のことでは、あなたに迷惑をかけましたね」

理事長室で、黒谷は少し無理して、目の前に立つ生徒に微笑んだ。

「生徒会長」

「いえ…」

九鬼は、首を横に振った。その右足には、まだオウパーツがついていた。

「しかし…あなたは、これからも背負っていかなければならなくなったわ」

黒谷の嘆きに、九鬼は微笑み返した。

「大丈夫です」

「確かに…あなたの足にあった方が、安心だけど…」

黒谷は、九鬼から視線を外し、真後ろの窓に顔を向けた。

「結局…彼は、戻って来なかったわね」

戦いの後、ジェースは玲奈を抱えたまま…姿を消した。

「大丈夫でしょう。彼は、オウパーツに操られることはないと思います」

九鬼は、ジェースから自分と同じ染み付いた血の香りを嗅ぎ分けていた。

しかし、そこに底知れぬ悲しみがあることも、見抜いていた。

そんなことを考えている内に、九鬼もまた…黒谷と同じように、窓から学園の様子を無意識に見つめていた。



「…」

学園内を、無言で歩いていた高坂は、仮面のオウパーツを掴んだ手を見つめていた。

(あの時、確かに声はした…。しかし!)

高坂は、手を握り締めた。

(あんなものに、惑わされるか!)

そう思った高坂の横から、声がした。

「だけど…人は弱いよ。みんなが、お前のように強くない」
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