天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「大丈夫?」

ティアナの言葉に、逆にジャスティンが聞き返した。

「先輩こそ、大丈夫ですか?」

全身に火傷を負い、無造作に切られた髪、白い鎧も煤けて溶けてもいた。

こんな姿のティアナを、ジャスティンは見たことがなかった。

「あたしは、大丈夫よ。命には、別状がないから」

さらっと言うティアナだが、ダメージの凄さは目に見て明らかだった。

「先輩…」

「それより、クラーク君を!」

ティアナの言葉に、ジャスティンははっとしてクラークを見た。

余裕で避けていると思っていたクラークが、踞っていた。

「クラーク!」

ジャスティンが慌てて駆け寄ると、クラークの手のひらに羽毛が突き刺さっているのがわかった。

「心配するな…。痺れ薬だ」

クラークはそばに来たジャスティンに、笑いかけた。痺れながらも、カードを取りだし、治療をしょうとしていたが、思うように指が動いていなかった。

ジャスティンは、クラークのカードを取ると、解毒魔法を発動させた。

「お、おのれえ!不意討ちとは、卑怯な!」

顔から落ちたギナムは、爪を床に突き立てると、立ち上がった。

その様子を見て、ティアナはギナムに向かって構えた。

「先輩…」

普段よりも疲れて見えるティアナの背中に、ジャスティンはクラークに治癒魔法をかけながら、自分のカードを取り出した。

「先輩!」

少し声のトーンを上げると、ティアナの背中に向かって叫んだ。

「ここは、俺達に任せて下さい!何とかします!」

「え!でも…」

躊躇うティアナに、

「先輩は、女神をお願いします!」

「ジャスティン…」

ティアナは、ギナムから目を離せない。

「ごちゃごちゃとうるさい下等動物が!女神の誕生は、誰にも邪魔させるか!」

ギナムの翼から、再び羽毛が放たれた。

「!」

拳を握り締め、構えるティアナの前に、ジャスティンが飛び込んだ。

「は!」

目にも止まらない動きで、すべての羽毛を手刀で叩き落とした。

「何!?」

絶句したギナム。
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