天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「了解しました!」

警備員は敬礼すると、頭を下げ、駐車場の方へ戻っていった。

そんな警備員の背中を見送っている前田に、さやかが近付き小声で訊いた。

「どうしました?」

前田は眉を寄せ、

「幾多流が、ボートで島に向かったらしい」

軽く舌打ちした。

島に渡るのに、潜水艦が来る前は、小型の漁船を使っていた。しかし、もともとは、ボートで1人1人島に渡っていた時期があったのだ。

「なぜ…先に行ったのでしょうか?」

と言ってから、さやかははっとした。

「ま、まさか…森田部長の!?」

そこまで口にしたさやかに、前田は口に人差し指をつけて、黙るように指示した。

「す、すいません」

さやかは、謝った。

「気をつけて…と言っても、あれは人間には関係ないもの…と言うよりも、絶対に関わってはいけないもの」

前田は、潜水艦の方を見た。

「その為に、島に結界が張られているのですよね。中の魔物を逃がさないようにする為ではなく…外から魔物を入れないように」

さやかは、島の真実の一つを口にした。

「まあ〜用心の為よ」

前田は突然、緊張を解くかのように、背伸びをし、

「今の魔王には、必要ないものだから」

肩をすくめて見せた。そして、さやかを見つめ、

「だって、あの結界も…魔神が来れば、ひとたまりもないわ。なのに…やつらは来なかった。あそこにあるのを知っててね」

前田は笑いかけた。

「し、しかし…」

さやかは目を反らすと、少し考えた後、

「やはり、あの島に行くのは」
「大丈夫!」

前田は、さやかの肩に手を置いた。

そんな2人の会話を、遠く離れながらも聞いていた人物がいた。

リンネである。

「…」

リンネは無言で笑うと、心の中で2人の会話に答えていた。

(今まではね)




埠頭から、1人づつ足下を気にしながら、生徒達が乗り込んだ後…潜水艦はゆっくりと動き出した。

目的地は、プログラムされており…予定では一時間もかからずに、島に到着することになっていた。

もうすぐ運命が加速する。

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