先生の青



蒸し暑い夜
ライトの灯りの中
香ばしいソースの匂い



「ねぇ、ねぇ、
市花なに食べる?
焼きそば?お好み焼き?
串焼きもあるー!」


絆は夜店を
キラキラした目で眺めてる


「フレンチドッグも
捨てがたいねぇ」



射的を見つけると
可愛いウサギの目覚まし時計が目に入る


「目覚まし時計なんて
使わないけど欲しいなぁ」


独り言のつもりで呟いた
雑踏にかき消されて
誰にも聞こえないって思ってた


けど


「市花、あれ欲しい?」


笹森くんが
いつの間にか隣にいて


「……え、あ、うん?」


私が戸惑ってる間に
とってくれた



「はい」


笑顔で目覚まし時計を渡されて


「……ありがとう」


どーしていいのか
わからなかったけど
これが正しい恋のような
気がする



ウサギが可愛い
目覚まし時計を見つめてると


「あ、もう少しで花火始まる」


友達の声に夜空を見上げる



ドォンッ……バラバラバラ……



重たい音がお腹に響いて
暗い夜空に金色の華が咲く




今日は土曜日
先生は彼女の元にいるんだろう





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