先生の青




自販機でホットの缶コーヒーと
ミルクティーを買って
美術室に戻った




三島先生は窓際に立ち
外をながめていた



「はい、コーヒーとサイフ」


「サンキュ」


ポケットに
コインケースをしまい
カシッて缶コーヒーを開ける



先生が一口飲むのを見てから
私も缶を開けた



窓からはグラウンドが見えて


野球部員が
ボールを投げたり
打ったり取ったり



「あんなに夢中になって
頑張れるってすごいな」


私が呟くと


先生は缶に唇をつけたまま


「そうかな?」


その言い方があまりにも
素っ気なかったから


「朝早くから夜遅くまで
野球部がんばって
すごいじゃないですか」



別に野球部に何も
思い入れはないけど
むきになって言ってしまった



「私にとって美術は
趣味の域から出ないし
朝から晩までなんて
絶対に無理だし

一つのことに夢中になれるって
やっぱり すごくないですか?」



三島先生は無表情で
チラリと私を見てから
持ってる缶コーヒーに
視線を移し



「そりゃ、すごいんじゃない?
オレは何も
否定してるわけではないよ」




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