先生の青



先生はスッ…と窓の外を見て



「一つのことに夢中になんて
なかなかなれないよ
絶対に途中で
嫌になる瞬間はあると思うし」



なんで こんな話を
してるんだろう


頭の片隅で思ったけど


窓の外に向けられた
真っ直ぐな視線
先生の横顔から
目が離せなくなってた



「その道を極めようと
その道で飯を食っていこうと
なれば、なおさら。
ストイックじゃないと
出来ないね」



だけどさ。って先生は眉を寄せ



「例えば野球だけ出来る人
例えば絵だけ天才な人より

何でも平均的に
こなせる人の方が
オレはいいと思うな」



「え?」



「いや、天才を
否定するんじゃなくてさ

何でも平均的に出来る人間も
道を極めた天才と同じくらい
すごいと思うから


ま、平均は
脚光を浴びないけどね

一つのことにのめり込むより
バランスが大切だと思うねぇ」



「…………三島先生」


「ん?」


「三島先生がぬるいから
幽霊部員ばかり増えるんだよ」



ははって先生は笑い


「いいんじゃない?
幽霊部員大歓迎だ」


本当に この人は
どこまでも 緩くてぬるい



ふぅ…ため息ついて
視界の端に入った先生の絵



こんな人が どうして
あんな青を描けるんだろう…





< 19 / 389 >

この作品をシェア

pagetop