先生の青



「イチノセイチカ」


先生がまたフルネームを
繰り返し言う。


「やめてよ~」


横目でにらむと


「イチノセイチカ
早口言葉みたい。
舌噛みそう」


……あんたは小学生か
くだらな~い



「名字が変わるかぁ……
そうだなぁ、
変わらないのは
名前だけか」



「改名したら
名前も変わるけどね」


「市花」


ドキッ。
名前で呼ばれて
少しビビった



「可愛い名前じゃない」



表情一つ変えずに言うから
私の頬が熱くなる。



ふと、先生の視線を感じて


なに?って聞こうとした瞬間



胸元に先生の手が伸びてきた


ドキ――――ッ
えええっ!なにっ?

反射的に
ギュッと目をつぶる



……… プチ


そーっと目を開けると


上の2つ開けてた
ブラウスのボタンを
先生は閉めた



「…なっ、せ、先生、なにして」



先生は
私のブラウスの
ボタンを閉めながら


「胸元、開けない方がいいよ」



「え?」



「はい、できた」


パッと私の胸元から手を放し


何もなかったかのような顔で
また缶コーヒーに口を付けた。





先生が私の
ブラウスのボタンを
閉めた理由は



家に帰って
着替える時にわかった



鎖骨のあたりに赤い跡


英雄さんが付けた跡が


ブラウスの胸元から


見えてたからだ。





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