先生の青



校舎に戻ろうと
先生が一歩踏み出して


あとを追うように
私も歩き出す。


ガッコ ガッコ
ゴミ箱を引きずる私を振り返り


先生がゴミ箱を持ってくれた



「……なんで先生が
ゴミ捨てなんて
してるの?」


ああ、って先生は笑い


「あまりにもデスクの中に
ゴミがたまってて」


……机の中にゴミ入れんなよ



ざわざわ……


風が吹いて揺れる木々の葉を
先生は目を細め見上げた



……あごのラインが綺麗だな



そう思うと
ふっ…と先生が
こちらを向いて
目が合ったから


パッと視線を逸らした



先生を綺麗だなんて
一瞬でも考えたもんだから
並んで歩くのが恥ずかしくなる



「あ、あのさ」


照れくささを隠すため
何かを喋らなきゃと思った



「さっきの男子。
助けてもらったんだから
先生にお礼くらい
言えないのかな?」


黙って走り去った男子を
軽く非難すると



「お前なら言えるか?」


「え?」


「あんな状況。
今に始まったことじゃないだろ

助けて欲しかっただろうな
ずっと ずっと誰かに

だけど

助けて欲しいけど
誰にも見られたくない姿でも
あるんじゃないか?

あの男子に非は一つもない
けど、傷ついた姿なんて
誰にも見られたくないものだよ

そんな状況で
誰にお礼が言える?」



先生は別に
私を軽蔑してる
わけではなく


淡々と話して
玄関に入って行った


顔から
火が出るんじゃないかって
くらい恥ずかしかった




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