先生の青




パタン
ドアの閉まる音が響いて
美術準備室を一瞬
静寂が包んだ



ドアの前
突っ立ったままの私に
先生は軽く伸びをしながら
「座れば?」って言った




でも なんとなく
素直に身体が動かない



立ち尽くしてた私を
先生が不思議そうな顔で見て
立ち上がりこちらまで来る



「イチ?」


ひょいと腰をかがめ
私の顔をのぞき込んだ先生から
ふいっと顔を背ける


「……私、知らなかった」



「ん?」



「も、森さんと
仲良く登校してるって」


……しまった
仲良くは余計だ
これじゃあ ただの……


先生は「……ふっ」て笑い
私の頭を乱暴に撫でた



「なに?妬いてる?」


むかっ

パシッと頭を撫でる
先生の手を払った


「妬いてないけど
なんで隠してたの?」


「隠してないよ。
愛夏とは駅が一緒だから
困ってるみたいだし
ついでって感じ」



「………その愛夏って
なんで名前で呼ぶの?」


「愛夏って呼んでって言うから」



「だけど」


私が口を開くたび
先生の顔がにやけていく



「なんで笑うのっ?」


「いやいや。
イチが可愛いなんて珍しいから」


「可愛いって……
ん?珍しい?
珍しいってなによっ!」


先生の胸をドンッと 叩いてやる
先生はあははって笑いながら



「今さら他人に妬く
関係でもないだろう

オレはイチじゃなきゃダメって
イチが一番知ってるでしょ」



そういう問題かなぁ


「愛夏だってすぐ飽きるさ」



先生は大きなあくびをして
私に背をむけ机に戻り
次の授業の準備を始めた





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