先生の青




………なんて
自分で自分を誤魔化して


なんとなく
風邪じゃないことくらい
気がついてる



生理が遅れるのは
結構あるけど
体調不良と同時に
胸が張って痛くなった



胸が張って痛い
なんて風邪の症状はあり得ない







夜、ベッドに寝転がり
妊娠検査薬の箱をながめる



となり街の
さびれた薬局まで出かけて
死ぬほど恥ずかしい気持ちで
買った物だ



おかげで帰り道
駅のトイレで
思い切りリバースした



つわりのせいじゃない
緊張したせいだ



そのままそのトイレで
検査しようとしたけど
手も足も震えて
開封すら出来なかった






「はあ………」



なんか ため息しか出ないな



検査薬を机の引き出しにしまい
ケータイを握る



………先生、電話しても
迷惑じゃないよね?



番号を一つ押す度
鼓動が早くなっていく



知らない番号だから
出ないかな………?



5回のコールのあと


「はい」


久しぶりに聞く先生の声


…………先生……
先生の声だ………



ジーンと胸がいっぱいになって
涙が出そうになって
手で口をふさいだ


喜びを噛みしめてると


「もしもし?」と
先生の声が
訝しむように変わった



しまった。
これは電話だ
しゃべらなきゃ
ただのイタ電になる



「あ、あの、私………」


その瞬間
ケータイ越し
先生が息をのんだのが
伝わった



「イチ………」



私を呼ぶ その声は震えてた





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