先生の青




ああ……って
胸が詰まった



何度そう呼ぶ声を
聞きたかったか



「イチ。
そうか番号変わったんだ
……でも電話して大丈夫か?」



「うん。大丈夫だよ」


「………そっか、そっか……」




そこからは
お互いに黙り込んでしまった


あまりにも嬉しくて
何も話せない




「…………イチ何か言えよ」


「先生こそ、しゃべってよ」


「ダメだよ、だってオレ……
イチの声が聞きたい……」


「わ、私だって、
先生の声が聞きたい」


「………ふ。
なんかバカップルみてぇ」


その言葉に二人で
クスクス笑った



「イチ。大丈夫?
最近、変わったことはない?」


ドキッ


「あ、うん何も。至って順調」


「そっか……
オレもさ、さっそく
美術教師の口が見つかりそう」



「え?本当に?」



「うん。中途半端な時期だから
採用はまだまだ先だけど
カナの――――――」



「カナさん?」



思わず刺々しい口調になった


先生もその空気を感じたのか


「あ、いや、誤解するなよ?
カナのお母さんの
知り合いのつてで
私立の高校の美術科を
紹介してもらえそうなんだ」



「ふ、ふーん……良かったね」



また美術科教師に戻れる
それはすごく喜ばしいこと


…………だけど先生


そっちでカナさんと
会ってるんだ………




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