【短編】鐘の音が聞こえる
「おー、寒かった。」



ケンは両手を擦りながら、息を当てている。



「…ぼーっとしてないで座ったら?」



ケンに促され、私は適当に座席に着いた。



「奈緒。」



「え…?」



「クリスマスまで、あと何分?」



私はケンに言われて、再び腕時計を見た。



「えっと… あと、30分もないよ」



「わかった。ありがとう。」



ケンは微笑み、口をつぐんだ。



「何なの…?」



街を駆け抜けるバスはスピードを上げて走りつづけた。



ケンは、窓を流れる景色をじっと眺めている。



私は、そんなケンを眺めていた。



…似てる。



でも、思い出せない。



なぜ…?



なぜ、思い出せないのだろう?









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