【短編】鐘の音が聞こえる
「健と一緒に行きたい」



私は健に抱きついた。



とても強く…
もう離れ離れにならないように…



しかし、健は悲しそうな目で、私の顔を覗き込んだ。



「ダメだよ。それはできない」



「どうして?! もう遠くに行かないで…! 二度と会えないと思ってたあなたにやっと会えたのに…!」



「君は、これからも生きるんだ」



私の肩を強く抱き、しっかりと見据える健…



その眼差しはとても力強くて、その意思がひしひしと伝わってくる。



涙が、止まらない…



「約束してくれないか?」



「約束…?」



「新しい恋をして、幸せになることを…」



「そんな約束… できないよ!!」



私の叫び声が、誰もいない公園の中で響き渡った。



「俺はずっと奈緒のこと見てる。奈緒の幸せを見届けなくちゃいけないんだ。」



そう言って、健は公園の時計を見た。



「あと5分だ。」



健のその真っすぐな瞳が私を見つめる。






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