道のない甲子園
兄の血の付いたボールを無我夢中で握り締め、泣き止まない日々が続いた…。
そんな私を見かねて、兄が夢を見せてくれたんだと思う。
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私は兄と昔のようにキャッチボールをしている。
「いいか、海。
毎日練習をしないと甲子園には行けないし、楽しく野球が出来なくなっちゃうんだぞ。
だから一緒にたくさん練習しような」
あの頃の私に兄の言葉は、兄の死から一歩踏み出す勇気をくれた。
「お兄ちゃんも一緒に…」
「あぁ。お兄ちゃんはいつも海と一緒だ」
「一緒に甲子園行こうね」
「絶対行こうな」
兄が私を抱きしめてくれた。
私は兄の温もりを忘れないように
力一杯兄に抱きついた。
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その日から私は昔のように、野球に没頭した。