いちばんの星
――――――
「最近めっぽうひとりの使用人にご執着なんだって?」
スラリと美しく輝く剣の手入れをしながらスティークが話しかけた。
「まぁな…」
同じように剣の手入れをしながらヴェルヌが答えた。
最近ヴェルヌがひとりの使用人しか部屋に呼ばない、そう聞いたのは使用人から。
「珍しいじゃないか…っていうより初めてか?お前がひとりの女に入れ込むなんて」
まさかついに惚れたか、というスティークの期待を裏切るような冷たいヴェルヌの視線。
「別に入れ込んでるわけじゃねぇよ。女なんてどいつも一緒だ。飽きたらまた次にいくさ」
「はは。お前らしいな」
――そう簡単には無理か。
小さく囁いたスティークの声は、ヴェルヌに届くことはなかった。
「さぁやるかっ」
そう言うとスティークは立ち上がった。
ヴェルヌとスティークは時々剣の稽古をする事があった。
サヴィアーノはヴェルヌのおかげもあって治安がよく平和な国だが、剣の腕を鍛えておくにこしたことはない。
「どうぞお手柔らかに…近衛隊長殿」
皮肉たっぷりにそう言うとスティークもまたニヤリと笑った。