いちばんの星


ミュリエルの心臓がドクンドクンと脈打っている。



(今の、どういう意味……)



恐る恐る扉を開けると、いつも通りのヴェルヌがそこにはいた。



「国王様…」



ミュリエルの声に振り向いたヴェルヌの胸元に…ミュリエルは見てしまった…



違っていてほしい、先ほどまでそう思っていた。



しかし、真っ赤に刻まれたおそらくリヴィアがつけたであろう印――。



それをみた瞬間、何故だかわからないけれど涙がでそうになるのを必死でこらえ、ミュリエルはいつものようにヴェルヌの話を聞いた。



しかし、ミュリエルの頭はあの時のリヴィアの勝ち誇ったような笑顔で一杯だった…



――国王様は自分だけのものではない…



そんな事わかっていたつもりだったのに。



その日ヴェルヌの部屋を後にしたミュリエルは、食糧庫に行く前に、庭の隅でひっそりと涙を流したのだった…




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