香る紅
「ったく素直じゃないねえ」

実紘は仏頂面で日陰に寝転がる緋凰の横でくすくすおもしろそうに笑っている。

「うるせえよ」

寝転がったまま、自慢ではないが長い脚を使って、実紘の頭に蹴りをいれる。

それでも、俺が本気で自分を傷つける気がないとわかっている実紘は、なおもくすくす笑う。

「織葉にもおんなじようなこと言ったけど・・・。言いたいことは素直にいいなよ?」

「・・・それができたら、苦労しねぇよ・・・。」

素直になれたら、織葉にあんな思いはさせてない。

こんなに今、悩んでない。

一緒に昼食をとっているはず。

できる限り織葉の横から離れないで、ずっと一緒にいるはず。

ただ、それを実紘に見透かされているのは気に入らなくて、さっきと同じように、何度も何度も実紘を蹴り飛ばしてみた。

けど、実紘は動じてくれなかった。

なんだかやたらと熱い、俺の頬をつまみながら、

「ったく素直じゃないねぇ」

同じ言葉をおもしろそうに繰り返された。

織葉とのことだけは、どうしても、実紘に勝てない。

いつか、祈咲とのことでからかってみたいんだが。

悔しかったから、蹴るのをやめなかった。





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