香る紅
学校に着くなり、祈咲ちゃんがものすごい勢いで抱きついてきた。

「織葉織葉織葉―ぁ!大丈夫!?学校来ても平気なの!?大丈夫!?」

祈咲ちゃん、私には抱きついてるくせに、器用に緋凰を足で攻撃していた。

あーーー、祈咲ちゃん、緋凰に対して怒ったまま、なのか・・・。

緋凰の機嫌は悪くなる一方なのに、実紘くんたら、それを止めもせずにおかしそうに笑ってみてるし。

あ、せっかく今日は一回もできてなかったのに、眉間にしわ、できちゃった・・・。

「祈咲ちゃん、本当にもう大丈夫だから、安心して?」

しっかり大丈夫なことを笑って伝えると、心配そうだった祈咲ちゃんも、いつもの笑顔全開の顔に戻ってくれた。

・・・から。

「・・・だから、緋凰蹴らないで?許してあげて?緋凰は悪くないの。」

ついでとばかりに言ってしまう。

けど、機嫌が直ったらしい祈咲ちゃんは、すんなりとその言葉を聞いてくれた。

何が面白いのか、実紘くんはそれで大笑いしてたけど。



祈咲ちゃんの機嫌が直るのを見届けると、1時間目の体育のために、緋凰と実紘くんは早々に教室を出て行った。

「ね、厄介な月イチのアレ、来ちゃったからさぁ、トイレ行ってから行くわ。」

と、あまり声をはばかることなく祈咲ちゃんは言ってトイレに行ってしまったから、一人で更衣室まで行くことにした。

本当に私、大丈夫なんだけど、そんなに顔色悪いのかな。

不思議に思ってバッグの中からミラーを取り出して覗き込むと、自分の顔より、その後ろのものが気になった。

「?」

そこには同じクラスの人と、先輩らしき人と、同学年らしき人の、3人が移りこんでいたから。

振り返ると、

「篠峯さん、ちょっと、いいかな。」

・・・珍しく余裕を持ちすぎて行動したのが間違いだったのかな・・・。

よくわからない男の子たち3人に、捕まってしまった・・・。




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