時計仕掛けの宝石箱
声が声帯を通り抜け、響也の口から大気に溶け込んだ瞬間、響也の脳は一気に覚醒した。



何故、まだ声がでる?喉笛はすでに、裂かれたはずなのに。

吹き飛んだ衝撃で、脊髄が砕けたはずなのに。



混乱した意識とは裏腹に、体は自らの声がスイッチになったのか、少しずつ周囲や自分の状態を認識し始めた。

無意識に首に伸ばされる手。震えた指から伝わったのは、元気に脈打つ、汗ばんだ首筋。

喉が裂かれたと感じたのは、響也の極限の恐怖による幻だったのだろうか。

否。

指を伝う液体を見ると、それは汗と鮮血。

恐る恐る血が流れる道筋を辿ると、一直線に伸びる傷が確認出来た。

薄皮一枚だけでは済まなかったようだが、致命傷でもない。

それが脳に伝わった瞬間、響也の口からは熱い熱い、安堵の息が漏れた。
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