黒猫前奏曲
朝起きると、温もりは消えていた。

昨夜まではいたはずの人物はもぬけの殻と課しており、最初からいなかったのではという錯覚に陥る。

「道成、おはよう」

久志が上肢を上げた道成に気づき挨拶をする。

「おぉ」

と、どうでも言いように道成は呟いてしまう。

「黒澤さん、帰ったみたいだね」

そんな俺に気づいたのか久志が声をかけてきた。

「いつ帰ったか全然気づかなかった」

「俺も。恐らく弥生も」

未だに布団を抱き枕状態にしながらグースカ寝こけている弥生を2人とも論外とだと考えたのだろう。

「あいつ無事に帰れたのか?」

「さぁ?でも、あの真っ黒な服だったら、闇に溶けててわかりずらいかもね」

そう答える久志になぜか道成は納得してしまう。

「今日の帰り、南高に行く」

「やっぱり…そう言うと思ったよ」

長年の腐れ縁なのか、久志は道成の考えがおおよそわかっていた。

おそらく、無事に帰れたか心配なのだろう…
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