いつでも逃げられる

何を馬鹿な事を！

私はギリ、と歯噛みする。

私をこんな埃臭い部屋の中に監禁している事自体が望まない事なのに、何を矛盾した事を！

「だったらここから出して。手錠も目隠しも外して、私を家に帰して！」

私が語気を荒げて言うと。

「それはできない」

予想通りの答えが返ってきた。

「僕は君と親密になりたくてここに連れてきたんだ。僕だけの君にしたくてここに連れてきた。家に帰したら、僕と親密になるどころか、君は二度と僕に近づかない。更には警察にも通報するだろう」

「しないわ。帰してくれたら警察には言わないから」

「帰さない。君はここで僕と一緒に暮らすんだ。それともまた口を塞いで欲しいかい？」