いつでも逃げられる
どこまでも利己的な返答を返し、男は遅い夕食を済ませた。

「今日は疲れたね、加奈子ちゃん…僕も眠る事にするけど…逃げようなんて思わないでね。逃げた所で車がやっと通れる程度の山奥だ。目隠しされたまま一人で出て行っても、怪我するのがオチだよ」

男はそう言って、その場に横になったらしかった。

…5分もしないうちにいびきが聞こえ始める。

「ストーカー野郎っ!」

悔しくて男を罵倒する。

余程疲れていたのか、男はそんな罵倒にも気づかず眠り続ける。

私が逃げないと信用しきっているのか。

それともどうせ逃げられないとタカをくくってるのか。

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