いつでも逃げられる
「……」

身動きが取れず、目も見えず、一人で満足に食事も取れない。

今の私は赤ん坊も同然の存在だ。

そんな私を、彼は数日間献身的に世話してきた。

…まぁ、彼が勝手にそうするように仕向けたのだ。

別に感謝なんてしていない。

世話が面倒ならば、私を監禁なんてしなければよかったんだ。

私が頼んだ訳じゃない。

私ははっきり言っていい迷惑だ。

「……」

立ち上がり、今にも逃げようとしている私に、男はまだ気づかない。

「……」

私はもう一度、その場に座った。

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