いつでも逃げられる
「ねぇ」

彼の手を借りながら私は体を起こす。

「約束。目隠しと手錠取って?」

「……」

甘えたように、媚びるように言う私に、彼は押し黙ったままだった。

「ねーえ?約束でしょ?」

「…ああ」

彼はまず私の背中に回り、手錠を取った。

一ヶ月ぶりに自由を手にする。

拘束の外された両手は、何だかおかしな気分だった。

これで体を拭くのも、食事を取るのも自分で出来るようになる。

その事が、少し寂しいような気がした。

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