【長編】距離
「この子がいるのは幸せよ。
けどね。
私と亮って、施設で育ったの。
だからね。
不安も多いの。
親に愛された記憶がないから。
唯一は、名前ぐらいよね。
親から名付けてもらった名前。
それ以外は、ないの。」


「大丈夫です。
苦しみをわかりあってる美弥ちゃんと亮さんなら。」


「ありがとう。」


美弥ちゃんは、少しだけ笑顔を取り戻した。


よかった。


「じゃあ、今は....」


「2人で小さなアパートに住んでるわ。
けど、ギリギリでやってるから....」


「そうなんですか...」


私には、どうすることもできない。


けど.....



やっぱり、美弥ちゃんと亮さんを連れてきて正解ね。


もしかしたら、もしかするから。


美弥ちゃんと亮さん、そして、お腹の子供が幸せになれるかもしれない。


どうか、亮さんが跡を継げますように。


私は、さっき知り合ったばっかりなのに願ってしまった。


願わずにいられなかった。
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