工場注意報
彼が休憩時間になっても来ないことから、夜勤に出ていた数人が呼びにいった。

作業部屋に入って、すぐに異変に気付いた。

生々しい血の匂いが部屋を満たしている。

そして機械の音がしない。

作業員達は慌てて彼の定位置に向かった。

そこで見たのは、血にまみれたダンボールに埋もれた首の無い彼の身体。

工場内に悲鳴が響いた。




彼の死は事故だった。

彼は機械の異変を他者に知らせるべきだった。

刃はダンボールの屑で支えられていただけなのだから…。

そんな簡単で単純なトラブルだったのに、彼は注意を怠った。

しかしそのことを叱ろうとしても、当人はもういない。

そして不思議なことに、彼の首まで無くなってしまった。

刃で切り落とされたはずの首は、作業部屋をいくら探しても見つからなかった。

そのうち捜査もうち切られ、首は行方不明のままに事件は終わってしまった。

そして工場は彼の死をもって、新たな作業ルールを決めた。

機械に異常が出たら、ベルを鳴らすこと。

工場内に響き渡るベルの音は、異常を知らせる。

作業部屋によってベルの音が変わっていて、機械の修理班はすぐに現場に駆け付けること。
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