大人の女と男の関係
「いらっしゃい。
今日はテーブルにする?」


摩耶さんは穏やかに成哉に尋ねた。


成哉の返事は聞こえなかったけど、摩耶さんがカウンターを出て行ったところをみると、きっと頷いたのだろう。


摩耶さんがメニューを手にしてテーブル席に案内しようとすると、彼女が成哉に向き直った。


「いつもはカウンターなの?」


「一人の時はね」


成哉が答えると、彼女は摩耶さんに言った。


「じゃあ、カウンターに座ってもいいですか」


言われた摩耶さんは、ではこちらにどうぞ、と私から一番離れた端の席を勧めた。


カップルが二人だけの時間をゆっくり過ごせるように。


私はじっと自分のグラスに目を落としながらも、こっそりそちらの様子を窺っていた。
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