危険な彼女
これで一段落。



桜が屋上に置かれているベンチに座っているため、奈津は向かいのスペース、つまり地べたに腰を下ろした。



疲れた、ということをアピールするために、少し大げさに背伸びをしてみたりした。



そして、ねぎらいの一言でもかけてもらえないかとさりげなく桜に視線を送る。




しかし、奈津の予想に反し、紅茶を持った桜は表情を歪ませていた。




「ぬるい」



「え?」



「私は冷たい紅茶が飲みたかったのに………

何よ、これ?
めちゃくちゃぬるいじゃない」




奈津は紅茶を手にとって温度を確かめた。



しかし、たいしてぬるくはない。



むしろひんやりとしている。




「そうかぁ?

普通はこんなもんだろ?」



「普通?

ならダメね、買い直し」


「…は?

はああぁぁぁ−−!!?」



「うるさいわねぇ…

はやく行ってきなさい、犬」




桜は携帯をちらちらと見せながら奈津を追い払うかのように手をひらひらさせた。



…………



悪魔だ、鬼だ。



誰だ?こいつをお姫様だなんて言ったやつは。



桜の前世はどこかの独裁者、もしくは女王様に違いない、と奈津はひとりで納得した。
< 13 / 491 >

この作品をシェア

pagetop