危険な彼女
……………




「は…はは……

我ながらドンマイ…」




奈津は紅茶を片手に一人、遠い目をして笑った。



事情を知らない人が見たら、間違いなくひくような表情。



奈津はそんな表情のまま、桜が待つ屋上へ急いだ。




「さく『遅いっ!!』」




毎度毎度、人の言葉を遮るのが大好きなご主人様である。



俺の言葉なんて、空気と同じくらいにしか考えていないんじゃないか、と奈津はブルーになった。




「申し訳ございませんでした、お姫様」



「違うわよ。

私は姫川桜、お姫様じゃないわ」




ボケを真面目に返される辛さも知らないらしい。



見るからに清楚な雰囲気を持つ桜は、そんな世界とは違う観点があるのかもしれない。




奈津は、ため息をつきながら、そっと紅茶を差し出した。
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