love letter~ヤンキーの彼氏~
今思えば、なぜ私は屋上に来たんだろ。


最初は逃げてるうちに扉に行き着いていた。


でも、扉の前に着いてから私の頭の中になぜか大樹の顔が浮かんできて妙な期待をもった。


チャイムさえも無視して授業サボって、屋上に。


「こっち来いよ。千恵。」


私を見ずに放たれた低い声に私の心は完全に祭り状態。


何も言い返せず、すっと立ち上がって大樹の傍へ勝手に進んでいく。


それはまるで磁石のように。


そして、大樹の傍へ着くと足はピタリと止まって……


何も言わず、ちょこんと大樹の隣に座った。


「素直じゃん。」


白い煙りを吐き出して、私に煙りがこないように反対方面を見てボソッと発した大樹。


素直?


私は素直なんかじゃない。


自分でもよく分からない。こんなに近くに居たら、ドキドキの音を聞かれてしまうかもしれないというのに。


ただ、勝手に足が進んでいっただけ。


なぜ?


待っていたから?大樹に会えなかったから?


よく分からないけど、大樹の言葉に反論できなかったのは事実。
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