モノクロ

館内をうろうろしていたら、一階の奥に自販機を見つけた。


小銭を取り出して、自販機を前に何にしようか悩んでいたら、

「何してんの?」

後ろから掛けられた声にドキッとした。


ドキッとした瞬間、手の中の小銭が床に落ちて転がった。


だってその声は、あの時と同じ──……。



「もうすぐ消灯時間だぞ」

ゆっくり振り返ると、私が落とした小銭を拾っていた。



「はい、これ」

「……ありがとう、ございます」


受け取る時に一瞬指先が触れて、奪い取るようにして手を引いてしまった。


……何でこんなことしたのか、自分でもわからない。



「あのうさぎ、どうした?」

「……え?」


「ゲーセンで見てた、あのうさぎだよ。……まさか、あのまま置いてきたとか?」

「あ……。ある、家に」


それを聞いて、久我先生は満足そうに微笑んだ。



「あ、そうだ」

「?」

「ちょっとそこで待ってろよ」

「え?」

「すぐ戻って来るから」



私の返事も聞かず、先生はどこかへ行ってしまった。
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