大空
透き通った

美しい空

12歳の夏。



あの頃、俺は、

空ばかり見ていた。



いろんな表情をする空が、好きだった。




家の前にある野原に寝っ転がって、空ばかり見ていた。




どこか遠いところで、同じこの空を、同じように見ている人がいるんだろうか。




友達が少ないわけじゃない。学校がつまらないわけでもない。


ただ、いつも見ていなくてはいけないような気がして。


空が、呼んでる気がして。





「透くん」




だれかが呼んだ。



ゆっくり体を起こすと、隣に住んでいる、1歳ちがいのお姉ちゃん的な存在の、美空ちゃんが近づいてきて、隣に腰を下ろした。




「美空ちゃん」




「透くん、また空見てたの?」



美空ちゃんは、やさしい笑顔で言った。


美空ちゃんは本当に美人だ。
透き通ったような、色白の素肌。長くてきれいな髪。切れ長の、少しつり目の瞳。白いワンピースが似合いそうな、きれいな人だ。



「空、好きなんだもん。」


「初めて会った時も、空見てたよね。」




僕等の、初めての出会い。
< 1 / 11 >

この作品をシェア

pagetop