グッバイ・マザー
 何でもそつなくこなす器用な人なのに、僕への接し方は不器用な姉。いつもは口煩いのに、僕が本気で困っていた時は必ず助けてくれた姉。彼女にあんたが死ねば良かったのにと言われた時、僕はその通りだと素直に思った。姉がそう言うならそうなのだろうと、単純に納得してしまった。
 お互い謝ったり、口に出したりもしないけど、心の中では静かに想い合う。それが僕達二人の、二人にしか分からないやり方だった。

 おやすみを二人に言い、自分の部屋に戻る。深い藍を基調にした、余計な物を極力排した、殺風景な僕の部屋。ベットサイドのテーブル上のクリップ型のライトをつけてから、ふかふかとした布団に潜りこんだ。
 空にはきっと満天の星だろう。明日は晴れるといいな。そんな事を考えながら、僕はゆったりとした気持ちで目を閉じ明日に備えた。
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