グッバイ・マザー
 電車を待つ間、最近手に入れたiPodに電源を入れた。イヤホンを耳に充て、膨大な曲のストックの中から、お気に入りの曲を探す。
 朝のホームは雑多な空気と音に溢れている。でも、僕はこの混雑も騒音もコロンの香りや煙草の煙も、全てが好きだ。ホームに次々と帰ってくる電車が、渇いた空気と轟音を運んでくる。埃っぽい匂いの中に、微かだが朝の匂いが混じる。
 アナウンスが構内に流れて、僕が乗る予定の電車の到着を知らせた。僕はポケットから小銭を取り出し、自販機でコーヒーを買う。それをすすりながら、やって来る筈の電車の到着を待った。
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