カラカラライフリズム



一樹は、凍えるほど寒い部屋の中にいた。


冬の間、あれほどあたたかい場所を探し歩いたくせに、今更になって、冬を再現しようと試みていた。





一樹はこの季節が――夏が、嫌いだった。



夕立の、どこかで低く鳴り響く雷鳴にさえ、心を乱された。


……今まで、雷に怯えた事など無かったのに。


(目が眩む強い日差し……蝉の鳴き声……汗……蒸し暑い部屋……こもる匂い……)


考えないように、している。


それでも、何故か今日は、いやに記憶が蘇る。


(叫び声……女……長い、髪……あれは……)
 

不意に、すぐ近くで落雷が起こった。


辺りがパッと光り、数秒遅れて、空が割れるような轟音。


息が、止まりそうになる。


耳を塞いだ。


寒い部屋にいながら、彼はじっとりと汗ばんでいた。



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