カラカラライフリズム



(あれは、誰なんだ……)
 

自分で自分に問うた。
 

その女は、記憶の中でねっとりと糸を引くように、黒く濃い存在だった。


拭っても拭っても、執拗に絡みついてくる。


長い髪に捕われそうになる。

顔は、よく思い出せない。

声も、正確なものか分からない。
 


知っているはずだった。


だが、一番重要な部分に手が届きそうになると、急速に意識が遠のく。


しばらくしてはっと我に返り、再び記憶の深奥に踏み込む。


さっきから、これの繰り返しだった。


一樹は、気付いていた。


まだ、自分に迷いがある……。

『扉』を開けることを、心のどこかで拒んでいる……。
 

一樹は、歯を食いしばった。
 

ぎゅっと目を瞑り、思い出せた分のイメージを、無理矢理再構築する。



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