カラカラライフリズム



樋口はその時、単に一樹が用心深い性格なのだと思っていた。


しかし、本当は違った。
 

一樹は悪夢を見る度に飛び起きては、発作的に銃口を自分に向けていたのだった。


引くか引かないかを迷っているうちに、汗が冷えて脳が覚醒し、夜が明ける。
 

後に一樹はその時の事を、「寝ぼけてただけ……」と語っていたが、


よく彼が朝から泣き腫らした顔をしていた事を、樋口は知っている。


衝動が理性を越えていたら、死んでいたのだ。


そして、一樹が珍しく「寮を出たい」と言った時……その受理に奔走したのも彼だった。



結局、その時は――記憶が戻りかけるという危機に至ったわけだが、今はもうそれも落ち着いたようだ。



その証拠に、彼は驚くべきスピードで、恋人を作った……!




樋口は、呑気にもそう信じていたのだ。
 


盲目的に、なりすぎていた。
 






かつて自分が一度、裏切られた事すら忘れ果てて……。



< 841 / 860 >

この作品をシェア

pagetop