危険中毒
 
『モニカ、愛してる。』


獣化直前の、何らかの
快感か苦渋に痙攣し
苦しみながら、
声にならない声で、
ゴウは吐露した。


その気持ちに、私は
応える事はできなかった。


兄弟の様に育ち、
守りあったゴウに、
ジニーに抱いた
恋愛感情のような類の
愛情は抱いてはいなかった。
何より、家族のような
思いだった。


そして、そのゴウを
苦しみから
救ってやる事すらも、
できなかった。


生きていれば
苦しむだけなのに。



どうしても、
生きる事に終焉を
与えてやれなかった。



あのジャングルで、
自分達が生きるために
繰り返した罪を


場所を変えて
侵すだけなのに。


それでも、ゴウに
生きていてほしいと
願をいだいた。


殺せない。

でも、約束は守れる。


あの幼い日々、
キムを追って、
必死に敵から逃げる時に
交わした約束を。


大人用の靴で、
まだ上手く走れなかった
私の手を引き、ゴウはいった。

「俺達は兄弟だ。
生きるも死ぬも、一緒だ。」

そんな言葉を
あの日の私は、
約束だと思った。


 
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