二人で一人〜永遠に
〔ガチッ…〕

部屋の扉が、開いた。

〔…リンッ…シャリンシャリン…〕

私の耳には、鈴の音しか聞こえていなかった。

「……冬…」

「千冬?!」

右肩を叩かれ私は我にかえった。

「あっ!…ごめんなさい」

「大丈夫か?…」

「平気よ…浩介?」

「ん?」

「…この前の人…」

「あぁ、来てるよ千冬の前に座ってる」

【…私の前…】

私は、自分なりに顔を真っ直ぐ向けた。

「…この前は、ごめんなさい…突然の事で頭が混乱してしまい…不愉快な思いさせてしまって…すみません…」

私は頭を下げた。

部屋の中が静まり返っていた。

「……千冬、彼は怒っていないよ…頭を上げて」

「………」

私は軽く頷いた。

「…この前も言ったように彼は喋る事ができない……でも彼は前に進めるように千冬と一緒に頑張ってみたいと言ってるんだ…千冬はどうかな?」

【前に進む…】

「…私は………」

「…ごめん、まだ分からないよな…焦らずに考えてくれ」

「………」

【私の心の中の…私は、どうしたいのだろう…何でまた、この男性と会おうと…】

「千冬?」

「何…」

「前に進めるか?」


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