神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
ザッザッザッザッ…。


「よし、ここら辺でいいだろう。」


月読は森の少し奥にある開けた場所で立ち止まった。
その場所は木立の間からぽっかり空が見え、太い木が2本重なるように倒れている。


透は未だにズキズキと痛む胸に手を当てたまま、月読に問いかけた。


「ここで何をするんだ?」

月読は腰まである長い髪を風になびかせたまま答えた。


「ここは滝の音もあまり聞こえない、森に囲まれたこの場所の方が精神統一するには良いと思ってな。」



「精神統一してどうするんだよ。そんなことで力が引き出せるのか?」


真意が分からないといった表情の透に、月読は静かに答えた。


「そこに座って目を閉じろ。ワシが言う通りに黙って従え。いいな?」

透は真剣な月読の視線に対して、素直に従うことにした。
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