神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

静まり返った森の中、意識の途絶えた透と集中した月読の姿だけが、一枚の絵のように止まっていた。


ビクッ!


透の体が震えると、意識を取り戻した透が顔を上げた。

月読は額に当てた手をどけると、透に語りかけた。


「どうだった?妖の記憶は。」

その問いかけに透は頭を振りながら答えた。


「ああ、俺の未熟さと能力の使い道が良く分かったよ。」


「具体的にどう違うかは分かったのか?それが一番重要だ。
改善点に気が付かなければ意味がないぞ?」

月読が静かに佇んだまま透を見つめた。


透は立ち上がると、ネコ耳をピコピコ動かしている巫女を見て答えた。


「そうだな…まずは爺様に憑いてた妖狐。
ただ単に火を操るだけじゃなかった、火に命を与えて焔狐(ほむらぎつね)を生み出して攻撃することが出来るようだ。」


「もう一体はどうだった?」


「それには驚かされたよ。…俺は身体能力を強化して、重い物を動かしたり高くジャンプしたりしてるんだと思ってた。」

「違ったのか?」

あくまで表情を変えないまま、月読は透に聞いた。
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