この空の彼方
芦多は難しい顔をして、灯世の前に立った。



どうしてそんな顔をするの?



私を責めるような目で見ないで。



「行くな。」



どうして?



どうして真実を語って聞かせておきながら、行くななんて言うの。



「行ったところでどうしようもない。」


「わかってますよ。」



ただの私の気休めにしかならないことぐらい。



それでも、行かなければ気が済まない。



「灯世、ここを出よう。」


「…え?」



唐突な発言に、灯世の目は点になった。



どういうこと?



「私はここには用はない。
二人で逃げよう。」


「そんな…。」



いきなりそんな…。



「千歳さん達や政隆様は?
どうするんですか?」


「自分の好きなようにするさ。」


「私……母様はどうすれば?
私が守護者としての役目を放りだせば、立場が…。」



芦多は顔を歪めた。



「それは考えてなかった。」


「それに何より、芦多様の立場が危うくなりますよ?
私をさらったなんてことがばれたら。」


「そんなもの。
非難など喜んで受けてやる。」



灯世は首を振った。



「私が嫌です。」



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