憂鬱girl
朝っぱらから騒ぐ男女なんて注目されるのも仕方ない。それがこの男の狙いだと分かっているけど、
「離してっ下さいっ!!」
「無理。おまえ抱き心地良すぎ」
愛しそうに細められる目と、柔らかく包む腕は反則だ。
「もうっ…!!」
どうしたって離す気が一向に見えない。このままじゃ真向かいに住むおばさんに鉢合わせしてしまう。あのおばさんがこの男の大ファンなのは知ってるし、大体この界隈でこの人を知らない人の方が少ない。
「…車乗りますからっ!!」
あたしは弱々しく溜め息を落とした。
「初めからそーいえよ。抱き締められたかったのか?可愛い奴」
フフンと笑うこの美男子を蹴り飛ばしたい。