神様のきまぐれ
舞台の下手に
スタンバイする。

毎回、心臓が
停まりそうになる。


緞帳がわりの真紅の布が、
送風に煽られはためく。


スモークがステージに流れ、
イメージチューンが流れる。

イヤホンから、
繋ぎのベースドラムが響き、
会場から、黄色い歓声が、
これでもかと沸き上がる。



マイクが、
志央と私の手に
渡された。


志央が、私の肩をだき、
マイクにブレス音を入れる。

会場から、一際高い
絶叫にも似た歓声が上がって、
私たちは、ステージに
飛び出した。


キモチイイーーーーー


スッゴイ快感ーーーーー


必死に編み出した、
喘ぎ声からはじまるコーラスを
ステージを歩きながら
入れる。

山本さんに、
曲に入る合図を送る。


私の一番の大仕事。


いつもの通り、日向さんの横、
客席からは、
クロスで隔離された空間で、
コーラスをする。


いつもの仕事。

・・・の、ハズが・・・


なんだか、今日は

違和感を感じる。


ベースライン・・・
変わってるよね?


今までと違う。


思わず、日向さんの
方を見た。

気付いた彼は、
少し笑みを浮かべる。


 
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