美湖 夜空を見上げてごらん?【月】
 私は目をつぶった途端ん夢の中へと引き込まれるのがわかった。




お父さんのこと。
お母さんのこと。
そして何よりお姉ちゃんのこと。
 私のお姉ちゃんは5年前、自殺をした。
 きっかけはお姉ちゃんのクラスの人が流したお姉ちゃんのデマ。
 そう。大きな事件となった覚せい剤騒動。ニュースにもなった。新聞の記事にもなった。そして、大事な命までも奪った大きな事件。
 いつもながらに勢いで帰ってきた私の目には、お母さんとお姉ちゃんの泣き顔。
 何が起こっているのか分からなかった私は陰で隠れて話を聞いていることしかできなかった。

 今思えば私の行動はお姉ちゃんのためには何にもできなかったもどかしさであふれていたんだと思う。
 お母さんはお姉ちゃんが死んでからわざと明るくふるまっているのがわかる。
 お父さんともお姉ちゃんが死んだ2年後に離婚し、私の家庭はたった2人。
 




 そこで私はふっと目が覚めた。起きてみると目の前に1人の男の子がいた。
「・・・大丈夫?なんか・・・苦しそうだったけど。」
 その男の子は言う。
 誰なんだ?私こんな人と友達だったっけ?
「あ・・・もしかして知らない・・・よね。おれさっき君の教室に行ったんだよ。ほら、キョウスケと。」
「ああ・・・近藤君の・・・友達?」
「そうそう!!これからもよろしく!!」
 その男の子はそう言って私に握手を求めてきた。
 私は求められるままに手を出した。
「うわー・・・色白いね。雪みたい。それに手ぇちっちゃくない?」
その男の子は言った。
 私は気になったことを言った。
「私のこと・・・気にならないの?」
 男の子は不思議そうな顔をした。
「・・・気になるって・・・何を?」
「私・・・ハーフだよ?みんな気味悪がってあんまり近寄ろうとしないもん。もし近寄ってくるんだとしても、相当の変わり者しかいないから・・・。」
「べつに・・・よくない?じゃあ聞くけど愛美ちゃんとか南波ちゃんとかのこと近寄ってこないでほしいとか思ってるの?」
 私は聞かれてはっとした。
 私のお父さんも前に同じようなことを言っていた。



「じゃあ美湖は、心ちゃんに寄ってこないでほしいって思ってるの?」



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