ペアリングを外して
気持ちはすっかり歯止めが利かなくなり、暴走している。
抱きしめようが、唇を奪おうが、体を重ねようが……三村が足りなくなってきている。
まるで麻薬。
三村中毒。
「小出、もう一回……」
そう言って俺の首に巻き付いてきた。
これだから、手放せない。
もう十年前の分は十二分に取り戻せたはずなのに。
束の間の幸せは嫉妬や苦悩と表裏一体だ。
三村に傾いている気持ちをどう処理していいのかわからない。
なのに久美を手放せない情けなさをどう克服していいかわからない。
そんな俺の隣で、三村はいつもと変わらずに笑っている。
自分ばっかりが苦しくても、それでいい。
さっきの幸せそうな顔を思い出すと、三村には辛い思いをしてほしくないと思った。