ペアリングを外して

 自分でも気付かなかった些細な変化に、しっかりと確信を持っている久美。

 なかなか鋭いじゃないか、なんて感心している場合ではない。

「考えすぎだろ」

「でも……」

 他にも思い当たることがあるというのか。

 何かを言おうとしていたが、口をつぐんだ。

「もうすぐ12月だから、期末の準備で仕事も大変なんだ。気付かないうちに疲れてんのかもな」

 それらしい話。

 嘘ではない。

 しかし久美は決定的な言葉を放つ。

「浮気でもしてるの?」

 泣きそうな顔をして、小さく言った。

 再び脳みそが揺れる。

 目が泳いでいないだろうか。

 もし泳いでいた時のために、俺はテレビに目を向けた。

「そんなわけないだろ」

 その態度が気に入らなかったのか、久美はまた小さな声で言った。

「じゃあ、携帯見せて」

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